携帯を取り出すと、メモリからひとつの番号を呼び出す。まだ指の覚えていないそれは、池袋の王様に繋がる番号だ。
 ―――信じられないことに、取次ぎなしで。



 見覚えのない番号から着信があったのは、つい昨日のこと。
 今まで散々厄介ごとに首を突っ込んできた手前、こういったコールにあまりいい経験がないマコトは、多少警戒しつつ応じた。けれど、流れ出してきたのは、想像していた誰とも知れない野太い声と対照的な、冷たく凍った王様の声で。
 布団に包まりすでに寝る体勢に入っていた体を起こし、何かあったのかとたずねれば、王様は笑いを含んだような声で何もないと答えた。無駄なことの嫌いな王様からのコールは、九割以上の確率で何かしらの事件を意味する。だが、どうやら今回の用件は珍しく一割にも満たない方らしい。
 黙ることで先を促すと、これはおれに直通の番号だ、と王様は言った。そろそろマコトのボキャブラリーも限界だろうからな、と愉快そうな調子で続けて、通話は切れた。
 どうやら王様には、電話のたびに取次ぎをからかわれることがお気に召さなかったようだ。



 耳元で11桁の番号が勝手にダイアルされ、コール音に続く。多忙な王様のこと、少し待たされるだろうという根拠のない考えに反して、ワンコールで繋がった。
 騒音に混ざって流れる王様の声は、相変わらず冷たく凍っている。

「どうした、マコト」
「おれと初詣に行く気はないか、タカシ」
「生憎だが願を懸けるほど暇じゃない。用件を話せ」

 いつもの調子で他愛無い冗談から入れば迷う間もなく切り捨てられて、だがマコトは王様の言葉に納得する。確かに、いつ叶うかも知れない祈りに任せるより、今、この冷たい王様に頼んだほうが叶う事は多そうだ。
 さよならマイジーザス。心の中だけで呟くと、つい先程抱え込んだばかりの厄介ごとを、なるべくコンパクトに伝えるよう努めることにした。



END




 直通になったのはタカシのさりげないアタックであり、お気に召さなかったのは取次ぎのほうが先にマコトの声を聞く上に、仲良くなったりしちゃうことです。
 マコトにはさっぱり通じていない模様。タカマコの極意ですね!(何が)

 …いきなり誰が読むんだとつっこみたくなるようなジャンルですみません(土下座)。

 最後まで読んでくださってありがとうございました!

雛谷色葉(20050202:日記にて公開、20050325:アップ)