瓦礫の中の小さな街。その中の、小さな教会。
もう、大きな十字架と盛大なステンドグラス、規則正しく並べられた椅子が、傾きながらも教会としての面影を残しているだけだったけれど。
ぱき…踏まれた瓦礫は、軽い音を立てて砂に戻る。
朱い髪の住人は、静かに一番前の椅子へ腰を落とした。
そして、光の射す天井を見上げ左手をかざす。
その手には、淡く光る銀色の指輪―――。





Oath






西暦3001年、15年に及ぶ領土戦争は核の使用により終結した。
敵味方関係なく全てを不毛に変えて。
運良く生き残った者達は、軍の特別施設に引き取られる者が大半を占めたが、勝手に街を作って生きている者もいた。
そんな街のひとつに、軍から派遣された科学者がきている。淡い水色の髪を持つ青年…普賢。
派遣といっても、繰り返しの生活に飽きた普賢が、放射能の度合いを調べに行くと言って、半ば無理矢理1週間の派遣を申し渡させたのだが。

「どこに行ったんだろう・・・。」

外に跳ねるクセ毛を揺らし、普賢は先刻からある人物を捜している。
それは、朱い髪を持つ青年…太公望だ。

「いつもならこの時間に遊びに来てくれるのにな・・・?」

今日はどうしても会いたいのに…と言いながら、普賢は街の奥の教会へ向かう。







街の奥の教会には、身よりのない太公望が一人で住んでいた。
彼は、核爆弾により家族を亡くしている。
それから少し精神に異常をきたしたらしい。
普賢と会ったことで精神は平常に戻ったのだが、普賢は明日ここを発たなければいけない。
無理を言って出てきたのだから、やはり1週間で戻らなければいけないだろう。
1ヶ月にしてもらえば良かった…と普賢は思う。
出来ることなら離れたくはなかったし、またここには来るつもりでいるが、そう簡単には来れないことは分かっているから。






教会は、さして遠いところに有るワケでもないのですぐに着いた。
ぎィ…半分崩れかかった扉を慎重に開ける。
崩れた天井から射す光で、一番前の椅子に太公望が見えた。

「望ちゃん。」

普賢が声を掛けると、びく…太公望は驚いて振り向いた。

「・・・普賢。」

普賢は太公望の方に歩み寄る。

「何を見てたの?」

「これ。」

太公望は、指輪を左手ごと差し出す。
普賢も、左手ごと手にとって。

「綺麗な指輪だね。望ちゃんが買ったの?」

「・・・唯一残ってた、母親の形見。」

はっ…普賢が顔を上げると、太公望は笑っていた。

「ごめん。」

「・・・ユビワ。」

太公望の言った言葉が理解ず黙っていると、太公望が普賢の左手を指して、笑顔のまま、もう一度。

「普賢も、指輪してる。」

普賢は自分の左手を見て、ああ…納得した。

「これも望ちゃんと同じ。母親の形見。」

銀に光る、少し細工の掛かった指輪を、コツ…右手でつつく。

「・・・普賢。明日ここを発つのか?」

「うん。・・・でもまた来るよ。」

「・・・うむ。」

そう簡単に来れないことは、太公望も承知の上。
流れた沈黙に耐えられないように辺りを見回していた普賢が、急に声を出した。

「望ちゃん、結婚式やろう!」

「はあ?」

突拍子もないことを言われて、太公望は心から疑問符を投げつける。

「だって、ここ教会だし。ね?」

普賢は、人に選択権を与えておきながら有無を言わさずもう準備に入っている。
太公望の使っているシーツを頭から被せ、その辺の花を太公望に持たせる。
そして、入り口まで連れていき、腕を組んだ。
あまりにも迅速かつ手際が良かったので、太公望は文句もでない。

「では、新郎新婦の入場です。」

普賢が笑いながら言う。
ここで、ようやく太公望が我に返った。

「・・・ちょっと待て、なんでわしが新婦なのだ?」

「気にしない、気にしない♪」

もう何も言う気のなくなった太公望を引きずって普賢が歌いながら歩き出す。

「I LOVE YOU FOREVER―♪」

「・・・楽しそうだな普賢・・・。」

傾いた十字架の前まで歩き、十字架と向き合う。

「汝、普賢は、太公望を妻とし、健やかなときも病むときも、富める日にも貧しき日にも、互いに愛し敬い、慰め助けて、いのちの限り共に生きることを誓いますか?」

なんでこやつはこんな言葉をスラスラ言えるのだ?…太公望は思ったが口には出さずにいた。

「誓います。」

普賢が答える。

「汝、太公望は、普賢を夫とし、健やかなときも病むときも、富める日にも貧しき日にも、互いに愛し敬い、慰め助けて、いのちの限り共に生きることを誓いますか?」

「・・・誓います。」

はあ…ため息を付いて、太公望も答える。

「では、指輪の交換を。」

太公望が不安な顔をする。

「望ちゃん、左手、出して。」

普賢は、自分のしていた指輪を太公望の薬指にはめる。
そして、笑顔で言った。

「絶対に、ここに戻るよ。」

太公望は、しばらく指輪を眺めてから。

「・・・普賢、左手。」

言われた通り普賢は左手を出す。
太公望は、自分と同じように普賢の左手の薬指に指輪をはめた。

「・・・待っておるよ。ずっと。」

崩れた天井から見えるのは、雲のない蒼いそら。
全てを祝福しているような、光。
嘘は、ひとつもないよ。





Congratulaitions !














終われ!




んー、普太・・・なのかな?頭の中では普太が思い浮かんでるのに、いざパソで書くと物語が違う方向へ進んでいく・・・。修行がたりません(涙)
精進したいと思います(出来るのか?)

最後まで読んで頂いて有り難う御座いました!

色葉。