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ホシニネガイヲ。 「望ちゃん!」 呼びかけと共に扉が開き、その向こう側から見えた普賢―――正確には普賢の腕に抱えられた物体に、太公望は冗談じゃなく扉を閉めてしまいたい衝動に駆られた。 来るのではないかな、とは思っていた。…思ってはいたけれど。 「………普賢。」 「なあに?」 両手いっぱいにごちゃごちゃと抱え込んだ普賢が、部屋の主の意向などお構いなしで上がり込んでくる。…いや、許可を求められてもそれはそれで怖いのだけど、問題はそんな事でなく。 「…何を、抱えておるのだ…?」 普賢が歩くたびにカサカサと涼しげな音を立て、目が覚めるような緑色をしたソレは、もう紛れもなく、見間違えようという方が到底無理な程に立派に育った――― 「笹だよ?」 七月七日。 謂われは誰もが知っている通り、離ればなれになっていた恋人達が、年に一度だけ天の川の上で会える、とゆうアレである。 (…年に一度、のう。) 最近はお互いに忙しくて会っていなかったから、普賢が会いに来てくれた、それは嬉しいのだけど。 窓に面している机の足に笹をくくりつけ、何やら楽しそうに飾り付けている普賢を横目で見遣る。 その視線に気が付いたのか、普賢もこちらを向いて。手に持っていた折り紙製の提灯を床に置くと、脇の紙袋をガサガサと漁りだした。 …嫌な予感がする。 だって、七夕に笹に飾り付けと来たら、もう次に来るのはアレしかないではないか。 「はい、望ちゃん。これ書いてね!」 しっかりと手に渡されたのは、予想に違わず、淡いオレンジ色をした長方形の紙。 いわゆる、短冊。 「…………。」 「書けたら笹に飾るから。ちゃんとお願い事かいてよ?」 何故、この年になってまで、お星様に願わなければならないのだろう。 見た目はさておき、精神年齢はとうに四十を過ぎている。それは相手も同じはずなのだが。 いつまでも、この非常識な仙人界で人間界の常識を持っている自分が悪いのか、目の前で楽しそうに短冊を書いている、適応力有りすぎな男が可笑しいのか。 そんな、どっちの結論が出ても自分にダメージが来そうな事を考えていた太公望は、風に揺れる笹を眺めながら、深い溜息を着いた。 「…大体に置いて、久しぶりに恋人に会ってるっつうのになんで他人の願い事を叶えなきゃいかんのだ…?」 その溜息とともに出たのは、太公望自身にも繋がる本音。はた、と気付いて目線だけで普賢を見れば、こちらを見ていた普賢とバッチリ目があう。 次の瞬間、思いっきり抱きつかれた。 「望ちゃん、可愛いっ!」 「〜〜〜〜〜〜っ!」 一生の不覚。思わず口をついて出てしまった台詞は、久しぶりに会ったと言うのに、笹の飾り付けにばっかりかまけていた普賢への不満。 それを間違うことなく受け取られてしまった太公望は、普賢の腕の中で思いっきり顔を赤らめた。 「ゴメンね望ちゃん!」 「いっ、良いから離れんかい!」 「えーだって寂しかったんでしょ?」 「〜〜〜短冊! 書くのだろうっ?!」 引っ付く普賢を無理矢理に引き剥がすと、筆を執って短冊に向かう。 けれど、短冊に書くような願い事はすぐには思い浮かばなくて。うーん、と唸っていると、願い事を書き終わった普賢が、笹にそれを飾りに行く。 「…彦星と織り姫が願い事を叶えてくれるのは、久しぶりに恋人に会えたからじゃないの?」 唐突にそんな事を言い出した普賢に、思わず笑いが漏れる。 「嬉しさのあまりってか?」 「…相変わらずムードないね、望ちゃん。」 呆れたような目線を向けた普賢が、でもそんな所かな、と付け足して軽く笑った。 「でも今日、曇っておるぞ?」 窓を指さしながらそう言うと、普賢は軽く窓の外に目を向ける。 「んー、じゃあ『自分たちは会えないからせめて』とか?」 んなアホな、と突っ込もうとすると、それより早く、思いついたように普賢が続けた。 「もしかしたら、雲の上で会ってるかもしれないし。」 「…ムードがないのう。」 そんな他愛もない会話をしながら、こんなのも良いか、と思った。
END...
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…ぶっちゃけた話、中国では七夕って言わないらしいですね。謂われは大体同じっぽいですが、乞巧奠(きっこうでん)とかなんとか…。 なんだか妙な話ですね。どうにも普賢の性格が違う方向に走っている気がします(笑)。 ではでは、最後まで読んでくださって有り難うございました! 管理人、雛谷色葉(20020707) …だ、そうですが。本当に妙な話ですね。いつもは小話は再アップしないのですが、今回は珍しくマトモ(?)な小説っぽかったので〜。 色葉(20020713:トップより移動) 何が書きたかったのか…ほのぼのでしょうかねえ。 色葉(20050325:加筆修正) |