酔っぱらい普賢。



 見慣れた扉の前で一度立ち止まり、重い扉を無断で押し開ける。今更改まって入室の許可を取るような仲ではないし、何より入室の許可を求めても、この時期には中から返事がないことを分かっているから。

「普賢?」

 いつもなら扉を開けてすぐのテーブルに突っ伏しているのに、今日はその姿が見当たらない。机やら資料やらが置いてある向かいの部屋も扉が開け放したままになっているが、その中にも普賢の姿を見付けることは出来なかった。

「いないのか…?」

 はて、どこかに出掛けるとゆう知らせを聞いただろうか、と太公望は首を傾げながら記憶を反芻する。確認のために開け放してある扉の中も覗き、中にいないことを確かめてドアを閉めた。
 出直すか、と呟いて振り向くと、突然視界が水色に染まって足に二人分の体重が掛かる。

「だっ…!」

 予期せぬ過負荷に足が耐えきれず、肩先にのしかかった普賢もろとも壁伝いに床に崩れ落ちてしまう。

「なにす、」

「好きだよー。」

 太公望の抗議の声を遮って、普賢の台詞が吐かれる。相変わらず突拍子もない発言に顔を赤くしてしまった太公望は、何か言い訳をしようと口を開いた。けれど、鼻を掠めたアルコールの匂いに思わず台詞を塗り替えてしまう。

「…酔っておるのか?」

「そんなことないよー。」

「…酔っておるのだな…。」

 ヤケに間延びした上機嫌な声は、明らかに素面のものではない。そんな状態の人間の言葉に顔を赤くしてしまったことが何となく悔しくて、太公望は意味もなく天井を仰いで溜息を漏らした。



END




キリリクどうしようかなーどうしようかなーと悩んでいたら思いついたネタ。



 親しい仲にも礼儀あり、とゆうことでノックくらいさせようぜ自分! サイト移転に際し、手を加えました。

雛谷色葉(20050325:加筆修正)