遠い日の記憶
  

 


 

 

それは、遠い昔の記憶。

 

呂望といわれていた、あの頃。
              

 

「兄上ぇ・・・」
呂望が、兄と呼ぶ人の裾を引っ張り、身を寄せてくる。
「どうした?呂望。怖いのか?」
呂望を大人っぽくしたような、瓜二つの兄が立ち止まりかがむと、にこりと微笑んだ。
泣きそうな顔をしながら、更にぎゅっと掴むと首を振った。                                  


―兄上は強い。僕なんかより皆頼りにするし、いつも優しくしてくれる―

 

もう日は傾きかけ、人気も無い。二人は食料や母親への反物を調達する為に、隣町まで行っていた。そして今、両手に荷物を抱えて家に戻るところだった。
「しかし・・・確かに日も暮れてきた事だし、急いだ方が良いな」

 

「おいっ!有り金全部置いていきなっ」
呂望は、驚きのあまり、とっさに兄の後ろに隠れた。
「たいした金は無い。これで勘弁してくれないか?」
そして、落ち着きをはらって薬指の指輪を外した。
「それは・・・」
兄は眼を細めて、静かにと囁いた。
その指輪は、婚約指輪だった。もうすぐ結婚する予定だ。

 

―何で自分はこんなに弱いのだろう。いつもいつも、守られているばかり。そして、必ず誰かを犠牲にしてしまう―     

 

「どうだ?」
「まあ、いいだろう。値打ちの有る物のようだ」
盗賊達の目の前を通り過ぎようとした。すると、盗賊の一人が反物を目につけた。
「おい。その反物も置いていけ」
「これだけは・・・」
「ならば、力尽くで!!」
盗賊達は、一斉に槍を構えた。 
呂望を抱えると、近くに置いてあった盗賊のものと思われる馬に飛び乗った。馬を走らせようとした瞬間・・・

ぐさっ

「うくっ・・・」
槍が、兄のわき腹を貫いた。
生温かい血が呂望に降りかかり、真っ赤に染めた。
「・・・血?」
苦しそうに顔を歪ませながらも、しっかり呂望を抱きかかえると馬を走らせた。

しばらく走ると、もう家まで目と鼻の先まで来た。盗賊達は、すでにもう諦めたようだ。
放心状態に陥っていた呂望は、我に返り兄の方に向いた。
「ごめんなさい・・・僕がいなければ傷を負うことも、大切な指輪も渡さずに逃げられたのに・・・」

 

―そう、それは全部僕のせい―

 

血で染まった手でそっと呂望を撫ぜた。
「なぜ謝る?俺は呂望が無事ならそれで良いんだ。実の弟を守りたいと思ってした行動なのだから」

 

『呂望も、いつか自分を犠牲にしても誰かを必死に守りたいって時が来るはずだよ』


「太公望師叔っ!」
太公望は、静かに眼を開いた。
「白鶴?」
「師叔、また瞑想しながら寝ていたでしょう。何度も呼んだのに・・・って、どうされたのですか?」
怒っていた白鶴が、瞬時にしておどおどしだした。
涙が一筋になって太公望の頬を伝っていた。
「あ・・・」
小さく声を発すると腕で、拭った。
そして、あまり見せた事の無い、いやに大人っぽさを漂わせる微笑がこぼれる。
「夢じゃ。夢を見ておった・・・」
白鶴は、首を傾げた。
「夢、ですか?」
太公望は、無言で髪を掻き揚げた。

 

・・・あまり見る事の無い夢。

 

それは、遠い昔の記憶。
    


 

  だああぁっ!!
  封神演技の小説を初めて書きました・・・っ(恥ずかしいっっ)
  しかも、望ちゃん(呂望か・・・)可愛くしてみましたv
  でも一応、参考した本があリます。
  
  『封神演技 上(妖姫乱国の巻)  階成社
        編訳=渡辺仙州  絵=佐竹美保』
  
  分かりやすいのでおすすめです。
    

 




作・綾琉楓乃さま。



管理人の無駄書き。
綾琉さまのサイトが閉鎖なさるため、
配布されていた小説を頂いてきたのものです。
綾琉さまの小説は全て好きと言っても過言では
ないのですが、この小説が一番好きです。
あっ、あにうえって呼ばれたい…(汚すな)。