どうしようもなく喉が渇く。喉の奥に流し込んだ筈の液体は喉を通り過ぎる前に蒸発して何を飲み下しても体の中には届かない。理由は分かってる。きっとあんな夢を見たから。アナタのせいであんな夢を見たから。いつも十時に約束して十時十五分に開くドアがまだ今日は開かないから。アナタがまだ遅れて御免って笑いながら言わないから。怒るわたしに御免って言ってアップルパイを差し出すアナタがまだソファに座らないから。わたしがまだしょうがないなって笑わないから。

ベランダで洗濯物を取り込んでいたらガラス戸の向こうから携帯の着信音が聞こえて慌ててサンダルを脱いで部屋に駆け込んだ。ベッドの上に放り出されたままで鳴り響いていた着信音が切れる前に会話を始めた。受話器の向こうから聞こえてきたのはよく遊ぶ幼なじみの声。向こう側で何度も跳ね返ってから届く声が不自然な電話。通知されなかった電話番号と聞き取りにくい音声が公衆電話だと告げている。御免ね今話せる?うん平気今どこ?あのね落ち着いて聞いて。

アナタに買ってもらったばっかりのミュールを足に引っかけてアナタに買ってもらった春物のコートを羽織って家を飛び出た。高いヒールで夜の乾いたアスファルトを叩く。周りの景色が後ろへと流れて慣れない運動に足首と喉が悲鳴を上げるのが分かった。ガラス戸を半ば体当たりで押し開ける。耳元で鳴り響く自分の鼓動がうるさい。幼なじみが首を振った。案内された部屋は暗くて寒かったけど背中に回された幼なじみの手はヤケに熱かった。まだ鼓動の速さが元に戻らない。

目を開けたらソファの上に寝ていた。驚いて起き上がると携帯電話が鈍い音をたてて床に落ちる。拾い上げて液晶を覗き込むとメールを受信した表示が見えた。ああなんて縁起の悪い夢を見たんだろうとぼやきながらメールを開く。送り主はあの幼なじみできっとまた遊ぼうとかそんな内容なんだろうと思わず苦笑する。何度遊んでも飽きないけれど明日はアナタとの約束があるのだから。メールには一言。元気出してね。一体何のことか分からなかったから返事をしなかった。



(信じたくないんです。だって嘘でしょう?)






だから何と言われるとちょっと困る(そんなのアップすんな)。この周りに感化されやすい性格はどうにかならないものか。



勢いで書いたので読み直すと意味が分かりません(え)。移転に際し、手を加えました。

雛谷色葉(20050325:加筆修正)