一人部屋。







 溜息と共に自室のドアを開けると、電気もついていない暗い部屋の中に人の気配を感じた。エースは顔をしかめると迷わずにベッドへと近づき、そこにある弟の顔を見下ろす。恒例になりつつあるその光景に、だから何でお前がここにいるんだ、とエースは部屋に入ってから二度目の溜息をついた。






 海賊王になる、とこの三歳年下の弟が言い出したのは、もう五年も前の事になる。それはつまり、エースよりも強くなるとゆう目標がすり替わってから五年も経ったとゆうことだ。今でも喧嘩を挑んでくる辺りその目標も忘れた訳ではないのだろうけど、今は海賊になるために、が前提となっている。

 海賊王になるんだ!

 あの頑固な村長が、どうしてこんな子供が言う戯言を本気で止めているのか、その理由を自分は知っている。だからこそ、自分が海に出るときもこの弟が海に出るときも本気では止めないのだろうとゆうことも分かっている。
 ベッドのシーツに手をついて、先日まで同室で寝ていた弟の顔を覗き込む。白いシーツに投げ出された自分と同じ黒髪を指ですくい上げて、軽く引っ張ってみる。それくらいでは身じろぎもしない弟に喉の奥で笑った。

「…なァに気持ちよく寝てんだ。」

 連日ここまでベッドを私物化されると、一週間前に部屋を別々にしたのはひょっとして自分の夢なのかと思えてくる。もう一度同じように髪を手ですくって、だけど今度は力を加えずに手を引く。が、指の間をすり抜ける髪の感触に何かを思いだしたように突然手を止めた。そして、そのままの状態で何かを思案したのち、意地悪く口元を歪める。
 足早に部屋を抜け出して、すぐに戻ってきたエースの手に握られていた物はブラシと髪ゴム。しばらく楽しそうにルフィの髪をいじっていたが、満足できたのか立ち上がって弟を見る。

「上出来。」

 そう言って満足そうに笑うと、ブラシを自分の机に置いてから弟がいるせいで狭いベッドへ潜り込む。目の前で揺れる弟の髪型に口元を緩めながら、反応が楽しみだなと眠りについた。
 今までの自分の睡眠不足に比べたら、可愛い仕打ちだろうとも思いながら。






「エ…、エースッ!」

 バタバタと足音をさせてリビングに駆け込んできた弟の怒声と、原因である兄の笑い声が平和な村に朝に響いた。






END






 2001年10月25日に書き上げたエール(てゆうかエース+ルフィ)小説です。別サイト開設するつもりで書いた小説なんですが、断念したためこちらへアップとなりました。

 最後まで読んでくださって有り難うございました。
雛谷色葉(20020713)



 兄さんの再登場を心待ちにしています。そしたらまた書きたいです。移転に際し、手を加えました。

雛谷色葉(20050325:加筆修正)