小さいときからずっと一緒だった。
だけどまさか、同じ人を好きになるなんて。






VIE FOR






「格好良いなと思って。」

英士、結人、一馬、将の四人で遊んでいた途中。ショーウィンドウを覗き込んだまま動かない将に何を見ているのかと問うと、将から返ってきた言葉は何だか複雑な言葉で。怪訝な顔をしたまま将の顔を見つめてしまった。その反応で将は自分が主語を飛ばした台詞を言ったことに気が付いたらしく、慌ててガラス越しに指で『格好良い』ものを示す。
将の指の下にあったのは、今騒がれているメーカーの時計。

「ああー、これ知ってる。」

「あれだろ?何かのタレントが宣伝してるヤツ。」

「こーゆうの欲しいの?」

「んー…格好良いよね。」

英士の顔を見上げて苦笑いをする。曖昧な答え方なのは、居候させてもらっている兄への遠慮なのだろう。そこでこの会話は終わってしまったが、さっき返事は肯定ととって間違いない。
将の誕生日一週間前と、将は欲しがっているが当分は手に入らないだろうもの。このキーワードが揃えば、将のことを想っている英士が出す結論はひとつしかないだろう。

「…貯金いくらあったかな…。」

「え?」

「何でもない。行こう。」

頭の上にハテナが飛び交っている将の背中を押しながら、気付かれないようにもう一度例の時計の値段を確かめる。声もなく頷くと将と並んで歩き出した。

横に並んでいる二人も同じ行動をとっていることに、英士はもちろんその二人も気が付かなかった。







五月の前半だというのに、半袖を着ても寒くないような光で照りつける太陽を睨み付ける。半透明の自動ドアをくぐると、冷房が掛かっているのかヒヤリとした空気に結人は身をすくめた。
店内を進みながら、先程まで浴びていた直射日光に目が慣れているために薄暗い店内を見回す。店内はさして広いワケでもなく、数歩で目的のものを見付けることが出来た。

(風祭喜ぶだろうなー。)

そんなことを考えながら目当ての時計を手に取ると、数日前に将と来たときには3個並んでいた時計が2個になっていて。
もうちょっと遅くなっていたら買えなかったかもしれない、と考えて、結人は普段信じてもいない神に感謝した。

「お先にお会計失礼します。」

カウンターにてレジのはじき出した金額をサイフから取り出すと、単調な台詞で受け答えをする店員に差し出した。

「1、2、3千円と250円のお返しになります。」

なんだか急に軽くなった気がするサイフにおつりをしまう。途中、単なる袋に入れようとしている店員に気が付いて、慌てて制止した。

「あの、プレゼントなんで。」

中途半端な台詞だが定員には通じたらしく、ビニールの袋を端にどけると包装紙の見本を手前に示す。結人は少し考えて、青い包装紙と同色のリボンで包んで貰うことにした。
店員は円筒状の箱を慣れた手つきで包んでいく。風祭には青が似合うからな、と遠いところに飛んで行きかけた意識は、店員に呼び掛けられた事で覚醒した。手渡された袋を抱えて、心なしか早足で家に帰った。

この日、この店で同じ時計が3つ売れた。そのどれも包装紙は青、リボンも同色。1つ目が売れたのは結人が訪れた約10分前、3つ目が売れたのは結人の帰った10分後だった。
もちろん、買った当人達はこの事を知る由もない。






そして5月10日、将の誕生日。
選抜の練習の後、ロッカーからスポーツバッグを取り出して、中から着替えを引きずり出していると目に付いた青い包みに一馬は目を細めた。
確かに今までは悔しさも嬉しさも共有してきた仲だし、これからもそれは一生変わらないものだと思っている。だけど、一緒の人間を好きになってしまった以上はやはり自分も引けない。

(結人と英士には悪いけどな。)

着替え終わったら、将を呼び止めて。プレゼントを渡しながら、今日こそこの想いを打ち明けるのだ。一馬はその包みを大事そうに避けると、何かを決心するように大きく息を吸い込んだ。

その隣では二人が同じ行動をしていることは、もう言うまでもなことだろう。






いつもは三人で返っているけれど、今日ばかりは二人に先に帰ってもらって、練習中に一緒に帰ろうと約束をした将が着替え終わって出てくるのを待っている。
もちろん、手には青い包みを抱えながら。
ふと、口元を緩めた瞬間に軽い音をたてて扉が開いた。

「「「風祭!」」」

綺麗に重なった三つの声と、三方向から差し出された青い包み。確認するまでもなく、自分と同じように包みを差し出しているのは先に帰ったはずの二人で。

「「「…。」」」

「…な、何?」

自分の名前を呼んだきり黙り込んでしまった三人に、将が困ったように問いかける。するとそれで我に返ったのか、当然三人が笑い出した。

「え、ええ?」

混乱する将を残して、その笑い声はしばらく止まらなかった。






将の部屋に並べられた三つの時計と、打ち明けられた三つの想い。どれも同じ物だったけれど、使われている時計が実はひとつしかないことを、本人達は知らない。






Happy Birthday !




一ヶ月くらいずっと書いてました…。ネタは企画始めたときから考えてあったんですけども。内容についてはあんまり詳しく考えてないので、時計にモデルはありません。

最後まで読んでくださって有り難う御座いました。
雛谷。