働き蜂を従えて、排卵期を待ち望む女王蜂。そして、女王のお呼びが掛かるのを待ち続ける雄蜂達。



QueenBee



東京選抜メンバー(一部)に質問。

 Q.風祭将のどこが好きですか?

「可愛いし、小さいし、ぎゅーとしたくなる所だなっ。」

「口調とか、仕草とか。風祭特有で良いな。」

「俺は」

「笑ってる顔が好きかな。」

「そんなの教えてやらないよ。」

「俺は」

「あー、細っこい足。」

「叩きやすい頭。」

「・・・俺は」

「べっ別に。あんなヤツのどこも。」

「全部。話すときに目ぇ合わせてくる所とか。」

「食べ方。」

「・・・俺は・・・」






落葉戦の後、おぼろげながら協力の文字が見えてきた選抜チーム。そのきっかけを作ったのは、他ならぬ風祭将だった。その試合でなんとなく分かってきた風祭将の人物像。
お人好しで、だけど負けず嫌いで。そして可愛い。
着実に増えていく風祭シンパ達。その中でどんどんと膨らむ『理想の風祭将』を壊す事件は、ある日突然やって来た。






「チビっ。おい、あいつどこ行ったんだよ。」

某チームとの試合が終わった後。控え室に向かう途中で、最後尾を歩いていた鳴海がすぐ前を歩く藤代に問いかける。

「知るかよ。」

仲が悪い訳では無いのだが、そりの合わないのがいつもの事だから、クセで対応が乱暴になってしまう。その藤代の対応に右眉を吊り上げた鳴海を見て、渋沢が仕方なく助け船を出す。

「さっきはグラウンドで片づけをしていたが・・・今はどうだろうな。」

キャプテンに答えられたのでは、これ以上藤代につっかかるわけにはいかなくて。煮え切らない気持ちのまま、言おうとした言葉を飲み込んだ。

「・・・ったく、ちびっ。ちーびー。」

その代わり、とでも言わんばかりに風祭を呼び続ける。風祭が嫌がるであろうアダ名で呼んでいるのに誰も止めなかったのは、鳴海と一悶着起こすと後が面倒なのを知っていたから。タオルを握る手に力を込めながらも、誰もが叩きたい気持ちを懸命に抑えていた。
今となっては、あの時止めておけば良かったかもしれない、と誰もが思っているのだけど。

「ち」

ガコ。

流石に耐えかねた渋沢が止めようと振り返った瞬間。ものすごい濁音がして、鳴海が前のめりに傾く。
濁音と不自然に切れた鳴海の声とを不信に思って全員が振り返るが、鳴海の後ろから覗いた人物に、思わず支えるのも忘れて倒れていく様を見送った。そして、鳴海が顔面から床に突っ込んだことで2回目の濁音。そこで全員が我に返る。
鳴海の後ろから現れた人物は、いつもと変わらない様子で笑っていて。そしてやっぱり変わらない調子で口を開いた。

「今、ぼくのこと・・・呼んだよね?」

後ろから現れた人物、風祭将は目を細めて倒れている鳴海に話しかける。その腕には身長の半分以上あるパイプ椅子を頑張って抱えていて。いつもなら思わず手を貸してあげたくなる様な微笑ましい姿なのだが。
今はそれが無性に怖く感じた。

(あれか?!あれで殴ったのか?!)

声を掛けて良い物かどうか迷っている間に、顔面からダイブした鳴海の意識が戻ったらしく。

「いってぇ・・・」

情けない声をあげながら上体を起こした。そして、後頭部と鼻の辺りを押さえながら風祭に向かって叫ぶ。

「てめぇ何しやがんだよ!」

「何の用?」

謝る気配もなく、張り付いたような笑顔全開で鈍い音をたてつつパイプ椅子を抱え直す。その行動に誰もが身を固くした。
一瞬言葉に詰まった鳴海はそれでも何とか言い直す。

「・・・なっ、何すんだって言ってんだよ、このチ」

最後の言葉が発音し終わる前に空中でパイプ椅子が踊って、本日3度目の濁音。

「用が無いなら呼ばないでくれる?忙しいんだから。」

鳴海にはもう聞こえてはいないのだけど。
動かないギャラリーを余所に、風祭は平然と後ろの小岩に話しかけた。

「何か時間くっちゃってゴメン。片づけに行こ?」

「お。おう。」

幾分かひきながらも返事を返す。そのまま振り返らずに廊下の奥へと消えていった。






お人好しで、だけど負けず嫌いで。そして可愛い。
このイメージが一部を除いて一新されたのは言うまでもない。






「お人好し、なんてぼくが言った訳じゃないでしょ?それに、これだけで諦めちゃうなら本気じゃなかったんだよ。」

まだまだだよね、と女王蜂は笑う。
女王蜂のお眼鏡にかなうその日まで、雄蜂達の邁進は続く。

例え、用が済んだら追い出されるのが運命だとしても。



end

・・・えー、前回から笛を何だと思ってるんでしょうか自分。文章もレイアウトも目に痛いです。御免なさい(涙)。

少しでもお楽しみ頂けましたらこれ以上ない幸いです。
雛谷。