弁慶の泣き所。



「功兄! …功兄ってば!」

うん、と曖昧な返事を返すと、肩に添えられた手に力が篭もり、先ほどよりも強く揺すられる。しばらくはそんな防戦を繰り返していたが、数十分の格闘の末、痺れを切らした将が勢いよく布団を剥ぎ取った。

「起きろっ!」

その途端に耳元で出された大声と、遮るものがなくなってしまった窓からの日差しに覚醒を余儀なくされる。

「…まだ二時半なのに…。」

「も、う、二時半だよっ!」

体を起こしつつ呟いた言葉に対して、至極尤もな突っ込みを入れた将は、抱えていた布団を畳んで床におろす。そしてまだ布団の上で欠伸をしている自分の体を跨ぐと、ベッドに面している窓を開け放った。

「シーツ洗いたいから早く起きてって昨日言っただろ!」

そんな台詞とともに、ベッドの上から転がすように落とされた。恋人にこの仕打ちはないだろ、と思うが、それと同時に声にも出したら、顔を赤く染めた将から馬鹿、と言う台詞と布団が投げつけられた。

こんな遅くなったら乾かない、とか、布団も干したかったのに、とか、まるで主婦のような愚痴をこぼしながら、口と一緒に体を動かす将を、ぼんやりと見つめる。
ベッドの上に乗り上げて、枕をどかしてシーツを半分だけ剥ぎ取る。体を反転させて、今まで自分が乗っていた半分も剥ぎ取る。それを静かに丸めて、自分も一緒に床に降りる。いったんそのシーツを床に置くと、投げつけた布団と枕をベッドの上に戻す。

そんな将を見ていたら、なんとなく。

(…頭、撫でてえ…。)

そんな衝動に駆られてしまって。
その欲求に逆らうことなく、床に降ろしたシーツを拾うために屈んだ、将の頭を撫でてみた。

「………へ? ナニ?」

一瞬の間の後、将が唖然とした表情で顔を見つめてくる。

「…いや、ちっこくて可愛いなと思って。」

特に理由なんてなかったのだけど、頭に浮かんだ理由をそのまま口にしたら―――

ドカッ。

思いっきり、蹴り上げられた。



「………ッ!!」

見た目は細くても、現役バリバリのサッカー少年である。脚力は半端ではない。あまりの痛さに、頭の中が真っ白になる。
蹴られた足を抱えて踞る自分を冷たい目で見下ろした恋人は、そのまま何も言わずに部屋を出ていってしまった。



…いや、功兄キャラ違うって…。とある朝の風景、とゆうことで。

雛谷(20020602)