HappyBirthday







十月一日。東京都に住む将達にとっては、願ってもない休日。月曜日と重なった偶然を利用して、多紀は前日から将の家へ泊まりに来ていた。と言っても多紀が押し掛けてきたワケではなく、将のお誘いがあってのことだけれど。






「え、多紀くんO型なんだ?」

「うん。カザくんはA型?」

少し遅めの朝食を口に運びながら、何の話から転じたのか食卓には星座や血液型の話題が飛び交っている。サク、と軽い音をたててトーストを噛み切る姿を見ながらそう言うと、将は驚いたような顔をした。

「…何で分かるの?」

「几帳面で神経質。A型の見本みたいだから。」

将はそうかな、と言いながらコーヒーカップに手を掛ける。その表情に口元が緩むのを感じながら、自分も手に持っていたカップを口に運んだ。
誕生日に恋人といるだけでも嬉しいとゆうのに、一緒に朝食まで食べられるなんて嬉しいことこの上ない。と思ったその瞬間、その言葉は紡がれた。

「そういえば、多紀くんの誕生日っていつ?」






本当に、それは今までの会話の延長として言った言葉だったのだけれど。そう言った途端、多紀は少しだけ目を見開いて将を見た。

(…あれ?)

将には意味の分からない沈黙が五秒ほど続いた後、多紀は軽く笑いながらカップを口から離す。

「十月一日だよ。」

カレンダーを振り返って確認するまでもない。昨日から多紀がこの家に泊まっていられる理由であり、都内に在住の学生にとってはカレンダーにも記されていない棚ぼたな休日の都民の日である、十月一日。それはまさに、もうまぎれもなく今日のことで。

「…きょっ、今日?!」

「うん。」

思わず立ち上がりながら悲鳴に近い声を出す。思考が色々なところに飛んでいるせいで上手い言葉が見付からない。自分は多紀に誕生日を祝って貰っているので、絶対に多紀の誕生日は頑張ろうと思っていたのに。

「………ごめん…。」

酸素の足りない金魚のように何度か口を動かして、だけど言い訳をするよりはと素直に謝った。すると、多紀の手が軽く前髪の付け根あたりに当たる。そして視界から前髪が消えた途端、俯いた額に少し冷たい唇が触れた。驚いて身を引くと、追い掛けるように耳元へもう一度。

「た…っ、多紀くん?!」

「どうかした?」

そう言った多紀の眼にはいつものような笑みは浮かんでいなくて。ただそれだけなのだけど、多紀が笑っているところしか見覚えのない将には怒っているように見えた。
耳を抑えたまま固まっていると、耐えきれないとゆうように多紀が笑い出す。

「…な、なっ何?!」

「何でもない。」

それでもまだ少し笑いを含んだ声の多紀を軽く目をやると、まだ感触の残る耳元をさすりながら椅子に掛け直した。コーヒーカップに手を掛けながら机に身を乗り出した多紀を見て、耳に手をやったまま思わず机から遠のく。

「誕生日プレゼント、貰っても良い?」

また何をやられるのかと警戒していた将は、多紀が言ったその言葉に少し安心した。無意識のうちに息を吐くと、笑ながら頷く。

「ぼくにあげられるものなら。」

「うん、じゃあさ。」

に、と目の前の顔が意地悪く微笑んだ。その笑顔に何かしら引っかかるものを感じてももう遅い。次の多紀の言葉に、将は本日二回目の悲鳴を上げることとなった。

「カザくんからキス、してよ。」






その日から、将は人の誕生日を決して忘れなくなったとか。






End



…多紀くん、性格が翼さんと被ってるよ…(涙)。しかもネタまで一緒だよ…(痛)。いやー、初書きの分際でブラック多岐くんにしたのががいけなかったんでしょうかねー。

最後まで読んでくださって有り難う御座いました。
雛谷。