笹の正しい飾り方。







 扉を開けると、金や銀のモール、雪に見立てた真っ白い綿、色とりどりに点滅するライトで綺麗に飾り付けられた―――

 笹が見えた。






「………翼さん。」

「言っとくけど、ぼくじゃないよ。」

 翼から、七夕用の飾り付けを持って家に来てほしい、と言う電話を受けたのが三十分ほど前。押し入れから七夕用の飾りを引っぱり出し、ついでに折り紙とハサミ、厚紙などを紙袋に詰め込んで家を出たのが二十分前。
 …そして、なかなか見られないクリスマス仕様の笹を見たのが、つい三分ほど前になる。

 どうにも言いにくかったことを問おうとすると、先回りした翼から与えられたのが上の台詞だ。よく考えれば、自分に七夕用の飾りを持ってきて欲しいと頼んだ翼がこんな飾り付けをするはずがない。

「じゃあ誰が…?」

 その問いに、翼は一瞬顔をしかめて、カップを静かに口から離した。

「…玲、だよ。」



 ゆっくりと発音された翼の台詞を理解するのに、たっぷり十秒間の間を要した。

「………えええええっ?! か、監督がやったんですか?!」

 翼は頷くと、将の顔の前に一枚のメモ用紙を掲げて見せた。それは紛れもなく玲の文字で、適当に飾って置いたとかそんな内容のことが書かれていて。

「か、監督…サッカーではあんなにスゴイ人なのに…。」

 これも有る意味ではなかりスゴイ偉業ではあるような気もするが。
 思わず頭を抱えてしまった将を見ながら、翼も苦笑する。

「帰ってきたらこうで…やり直そうにも家に七夕用の飾りはないしね。」

 で、将に来てもらったわけ。
 例の笹を見ながら言う翼に、将も納得する。そして飾り付けしましょうか、と言おうとして気付く。

「あ。」

「…どうかした?」

「えと、飾りは一応持ってきたんですけど…のり、とかってあります?」

「…あるけど。…のりで笹に付けるわけ?」

「ちっ、違いますよ! そうじゃなくて!」

 自分の考えていたこととは見当違いな方向に考えられてしまって、慌てて否定する。持ってきた紙袋の中を漁って、ハサミと折り紙を取り出した。

「飾りがちょっと少ないんです。だから、作ろうと思ってたんですけど…。」

「将が持ってきたのはどの位なわけ?」

 このくらいです、と机の上に紙袋の中身を開ける。
 笹の大きさから考えると、確かに少し足りない。

「…なるほどね。ちょっと待ってなよ。」

 ソファから立ち上がって、リビングを出ていく。しばらくすると、のりの他に、折り紙やらハサミを抱えた翼がリビングに降りてきた。

「じゃあ作りましょうか。」

 そう言って折り紙を手に取るが、翼は動こうとしない。

「…翼さん?」

 顔を覗き込みながら呼びかけると、翼は困ったような顔で黙っている。
 その仕草に、ふと、ある考えに辿り着いた。

「…作り方、知らないんですか?」

「…やったことない。」

 ふてくされたように明後日の方向を向いて言う翼が、何となく意外で。思わず口元が緩む。

「…なに笑ってんのさ。」

 それに気付いた翼に不機嫌な声でそう言われて、将は慌てて口元を引き締める。

「え…と、じゃあ一緒に作りましょう?」

 まだ不機嫌ながらも折り紙を手に取った翼に、内心で胸をなで下ろした。過去の経験から、こう言うパターンで翼を不機嫌にさせると、色々コワイことを知っている。冬至の時には、確か一緒にお風呂に入るハメになったのだ。
 もちろん、それだけで済むはずがなく、…まあ、とにかく色々あった。

「…将?」

「えっ?!」

「作らないわけ?」

 どうやら一人で考え込んでいたらしい。慌てて自分も折り紙とハサミを手に取った。

「…天の川とか作りましょうか。」

「あの簾みたいなヤツ?」

「はい。簡単ですし。」






 天の川、提灯、鎖…。
 机の上に、色とりどりの飾りが出来ていく。一通り作り終わったところで、少し手を休めた。

「ええと…あと何かありましたっけ?」

「…星、とかなかった?」

「あ、そうですね。」

 翼の言葉に頷いて、黄色の折り紙を取り出す。それを見た翼が、思いついたように口を開いた。

「飾り付け終わったらさ。」

「…え?」

「晴れてるし、星、見に行かない?」

 言われて、思わず窓の外を仰ぐ。そして翼の方に向き直って顔を見ていると、苦笑した翼に頬をつねられた。

「…返事は?」

「行きます!」



 黄色い折り紙を折りながら、監督に感謝しないとな、と思った。






END...



あのビロビロした飾りは、天の川とは言わないんだろうか。……まあいいか(良くねえよ)。なんだかよく分からない話であるなあと自分で思う。…冬至の話は、分かる人にだけ分かるネタです(いるのか?笑)。

封神でも書いたんですが、キャラ性格違えよ!まあ、初めは功将のつもりだったからだったりもするんですけど。

ではでは、最後まで読んでくださって有り難うございました!
管理人、雛谷色葉(20020707)



冬至小説とは受験期でサイトを休止していたときに、携帯から日記に書き込んだ小話です。繋がってたんですね。知らなかった(オイ)。

雛谷(20020713、トップより移動)