そーゆー関係。







「アンケートにご協力ください。」

結人との待ち合わせの駅で、突然後ろから響いた声に驚いて振り向く。知らない女の人の笑顔が予想外に近くにあって、思わず悲鳴をあげてしまいそうになったのを喉の奥で噛み殺した。

「アンケートにご協力ください。」

まるで機械のように同じ発音で繰り返される。そう言えば、この前もこんな風に声を掛けられた事があったなと思い出した。確かその時、結人から上手く断れる方法を教わったと思うのだけど、それがどうしても思い出せなくて。もともと人の良い将は上手く断ることができずに頷いてしまった。

「お名前は?」

ありがとうございますと形式だけの謝礼が述べられたあと、クリップボードにペンを走らせながら投げかけられる質問に答えようとしていたとき。

「えと、風祭…、わっ!」

ぐい、と後ろから肩を引かれた。

「わ、若菜くん。」

「悪ぃ、電車ひとつ逃がした…。」

そこまで言いかけて、結人は目を軽く開く。

「…知り合い?」

「え、あ、ううん。」

将が説明しようと続けるより先に、その女の人が口を開いた。

「アンケートに答えて頂いているんです。宜しければそちらの方もご協力お願いできませんか?お時間はとらせませんから。」

時間をとらせないアンケートなんか採る意味あるのかと若菜は思うのだが、人の良い将はそんなこと微塵も思わないようで。すっかりアンケートに答える気になっている将を横目に、結人は溜息をつくと将の横に並んだ。
適当に答えて切り上げるつもりでいたのだけど、女の人がまず最初にした質問に、二人して思わず顔を見合わせてしまった。

「お二人の関係は?」






結人の告白に将が頷いた今でも、相変わらず東京選抜のメンバー内は邪魔者が多い。休憩中はもちろん、選抜練習中に将が一人でいるなんてことはまず有り得ないし、どんな隙間にでも入り込んでくるので、いつでも油断は出来ない。

「風祭!」

「あ、うん今行く!」

結人の方を振り返ってそう言うと、翼や柾輝などに申し訳なさそうに頭を下げながら急いでこちらに走ってくる。会話は聞こえないまでも、あの将の態度からして何に誘われていたのだろう。

「ゴメン、帰ろう?」

笑顔で言う将に同じように笑顔で頷く。

「椎名たちと何か約束?」

いくらか暗い道を歩きながらそう聞くと、将は少し首を傾げて。だけどすぐに首を振った。

「今日、翼さんの家で遊ばないかって誘われただけだよ。」

「俺の方来ちゃって良かったのかよ?」

将は少し困ったような顔をすると、顔を手で隠しながら目を逸らした。

「…だって、…若菜くんと一緒に帰りたかったし…。」

手で口元を覆っていたせいでハッキリとした声ではなかったけれど、その言葉は確かに結人の耳へ届いた。結人はふと口元を緩めると、口元を覆っていた手をほどく。そして少しだけ身を屈め、何が起きているのか理解できていないであろう将の唇に自分のそれを重ねた。
瞬きすらせずにそれを受け止めた将に苦笑して、ほどいた手を繋いだまま歩き出す。しばらく黙っていた将が、突然顔を赤くして結人の背中を叩いた。

「…わっ、若菜くん…!」

恐らく手を繋いでいることとキスをしたことの二つに対して言っているのだろうけど、結人も人混みの中でするような物好きではないし、きちんと人がいないことを確認してやったのだ。

「大丈夫、駅までは人いないし。」

将は赤い顔をしながら周りを見回して、安心したように溜息をつく。そして、結人の手を軽く握り返してきた。

「…駅まで、なら。」

結人が驚いて振り返ると、将はそう言って結人の隣に並んだ。





顔を見合わせたまま動かない二人に、女の人が首を傾げる。どうかしたのかと問うかけようとしたとき、二人が軽く笑いあった。

「やっぱ、俺ら時間ないんで。」

そしてそのまま、質問には答えずに走り出す。






お互いに好きあってるし、堂々とはできないけれど、手も繋ぐし、キスもする。つまりまあ、そーゆー関係なんです。



END




長く待って頂いたにも関わらずリクが微妙に未消化になってしまいました…。しかも激短…。すみません、愛だけは込めましたので、貰ってやって下さると嬉しいです…。

最後まで読んでくださって有り難う御座いました。
管理人、雛谷色葉。