+好きの一言+





言えない言葉があるんだ。
いつも言いたいのに口にすると恥ずかしくて、結局いつまでも言えない。
でも大切な人に自分の気持ちを伝えたい。だから。
今日こそは、言おう。



「今日も暑いなー・・・。」

僕の横で、翼さんが忌々しそうにそう呟いた。

「しょうがないですよ。だって夏ですし。」

僕が苦笑しながら声をかけると、翼さんはじとっとこちらを睨んだ。
暑くて不機嫌だったのが、僕の言葉で更に不機嫌になったようだ。

「・・・・お前、暑くないの?」
「暑いですよ。でもそんなに動いてないから平気です。」

僕がそう言ったら、翼さんは少し考えてからにやっと笑った。
何か企んでいる笑顔。

「将。」

不敵な笑みの代わりに、滅多に見せない綺麗な笑みを浮かべて翼さんが僕に向かって手招きする。
頭では『こういう場合は絶対に何か企んでいる。』とわかっていた。
だけど、僕の大好きな翼さんの微笑みがそこにある。
・・・結局、僕は何かの引力に導かれるように翼さんのところへ行ってしまうんだ。

「・・なん、ですか?」

ちょっとだけびくびくしながら用件を聞いてみる。
すると、翼さんは更に鮮やかに笑って自分の目の前を指さした。
どうやら『座れ』と言っているようだった。
僕が素直にそこに座ると、突然翼さんが覆いかぶさってきた。

「なっ・・・つ、翼さん!!?何してるんですか!!」
「何って、押し倒してるんだけど?」

さらっと言われて僕は唖然としてしまった。

「な、な、な、何言ってるんですか!?」
「日本語。」

翼さんは焦る僕を適当にあしらうと、不意にキスをしかけてきた。
それは触れるだけの優しいキス。
僕の大好きな、キス。

「つ、ばさ・・・さ・・・ん・・」

繰り返されるキスに流されそうになりながら、なんとか翼さんの名前を呼ぶ。

「何?」

短くそう言うだけで、翼さんは一向にキスをやめようとしない。
僕はぼんやりとした頭で、今日こそは言おうと決めていた言葉を口にした。

「す・・・、き・・・・」

普段なら絶対言えないような言葉。
だけど、もう頭が朦朧としていた僕は言いたかった言葉を何のためらいもなく口にしていた。
絶対言おうって決めてたから。そして、今本当に翼さんが好きだって思ったから。
すると今まで繰り返されていたキスが止まった。
僕は不思議に思って閉じていた目を開けると、驚いた顔をしている翼さんがいた。
だけど僕と目が合ったら、本当に幸せそうに微笑んでくれた。

「・・・将・・・」

小さく僕の名前を呼ぶと、翼さんは僕を抱き起こしてぎゅっと抱きしめた。

「嬉しい・・・僕も好きだよ、将。」

耳元に直接囁かれた言葉が本当に嬉しそうで、僕まで嬉しくなってしまった。

「将の気持ちを疑っていた訳じゃないけど、たまには言葉で言ってほしいよ。」

優しく、いつもよりも柔らかく言われた言葉に翼さんが本当に不安になっていたことがわかった。
僕は自分の好きな人を不安にさせていたとわかったら、申し訳なくなってしまった。
ごめんなさいの意味を込めて、翼さんの服をきゅっと握った。
そしてふとあることに気づく。

「翼さん・・・暑いんじゃないんですか?」
「今はそんなの関係ないよ。」

そう言うと、翼さんは更に強く僕を抱きしめてきた。
僕はくすっと笑うと、翼さんの服を握っていた手を背中にまわして抱きついた。



今まで言えなかった言葉はやっと言えたけれど。
あれ以来、翼さんは何かと僕に言わせたがる。
恥ずかしいからだめだっていつも断っているけれど、たまには言ってみるのも良いかもしれない。
僕の一言で、翼さんはすごく幸せそうに笑ってくれるから。
・・・あなたの笑顔が、見たいから。



+end+




管理人の雰囲気をぶち壊すコメント。

やはり綺紗羅さんの描かれる小説は良いですねvvv独特の雰囲気で一度読んだら忘れられませんvvv

綺紗羅さん、本当に有り難う御座いました。